オープンイヤーイヤホンはポンコツを救う
私はポンコツだ。
私の人生は、たちの悪い悪夢のようなものだと思ってもらえばだいたい合っている。
走っても走っても目的地につかないし、電車は正しいものに乗ってもいつの間にか反対向きになっていたり乗り過ごしていたりする。持ったはずのものが消え、話したばかりのタスクが思い出せず、次々と場面と目的が変わり何をすべきかわからない。服の繊維がかゆくて気になる。スマホに身体が張り付いて離れない。
そんなおしまい品質の生活が、オープンイヤーイヤホンで変わった。
オープンイヤーのイヤホンとは、要は周りの音が聞こえるイヤホンで、耳の穴ではなく耳自体にカプッと挟むような形で取り付ける。
イヤホンは大嫌いだ。耳の中の空気がギュッとされるし、すぐズレてくるし、自分の声とか息がこもって聞こえるし、なんでみんなこんなものを使えるのかわからずにいた。不快すぎる。しかも、電車のアナウンスが聞こえなくて乗り過ごす。
それがこれならなんの問題もない。音楽を聴きながら過ごしていてもアナウンスが聞こえるから、Googleマップで確認した時刻よりも前になぜか電車がついてしまったときも降りることができた。(調べた電車より前のものに乗っているということに気がついてなかった。)
ついに「おしゃれな音楽を聴きながら電車に乗って目的地に待ち合わせ時刻までにたどり着く」という憧れの行為が自分の手のひらまで降りてきたことに興奮が隠せない。普通の人にとっては電車で目的地にたどり着くのは造作もないことだろうが、私にとってはトロフィーをもらいたいくらいの偉業だ。その上、乗り換えをミスせず到着時刻まで守れるなんて!普段なら音楽を聴くことにしたらスマホは基本見れない。モニターとにらめっこをするように努めないと隣の県まで連れて行かれてしまう。そんなポンコツが音楽を聴きながら乗り換えが高確率で成功できるレベルにまでなるのはかなり最高だ。
付け心地も悪くない。耳にものが当たってるのはくすぐったくて仕方がないが、カナル型よりはよっぽどいい。なによりこもってないのがいい。聞こえ方もスピーカーに近くて、開放感がある。イヤリングが耐えられるタイプの人なら我慢できる範囲だと思われる。
そうは言ってもつけたてはもう不快でたまらないし音声を流そうもんなら耳元で直に囁かれてるくらいの感覚がして使ってられたもんじゃないが、しばらくつけっぱなしにしてから最小ボリュームで音を鳴らせば耐えられる!そこからじわじわ大きくすると好みの音量で聞けるようになる。
もちろん素晴らしいのはそれだけではない。スマホ中毒から脱却し、作業効率をあげることにも役立っているのだ。
スマホ中毒がかなりひどく、朝起きてスマホに目を落として、次に気がつくときには日が暮れていることさえある。スマホがあるのに使わずに置いておくことがもったいなく感じて、触らずにはいられない。しかしそれでは生活が成り立たないので、動画や音楽をスマホのスピーカーで再生して音を流し聞くことで、情報と接触している感覚を維持し手を離して仕事をするというハックを実践していた。
しかし、このハックはイヤホンが使えないとかなり不便でもある。家事をしたいのに、ちょっと動くと聞こえなくなる。片手にスマホを持っていると作業が捗らないし、ついつい触ってしまって結局またインターネットに沈んでしまう。
それが今どきのオープンイヤーイヤホンなら、スピーカー級の開放感を維持しつつ、スマホから離れても変わらぬボリュームで話が聞ける!ワイヤレスなので私のタイニーハウスくらいなら部屋を移動しても踊ってもかまわないし、本体に触れることで再生/停止もお手の物。スマホに触れる頻度が大幅に下がったことで、作業の効率が大幅に改善した。
人の聞いても聞かなくてもいい話を垂れ流しておくと、脳内の自己破壊的な思考から離れることができるのもいい。程よく注意が散漫になって、家事などの精度を求められないタスクがやりやすくなる。手も精神も空いて、家事がやりやすくなった。
そういうわけで、ポンコツ同志におかれましてはぜひオープンイヤーのイヤホンを試されてみてはいかがだろうか。オープンイヤーのイヤホンは、我々の悪夢のような人生にささやかなキラメキをもたらしてくれる。